HP-DX1000

今回はこいつJVC HP-DX1000です。

かなり安い中古が出ていたので試しに購入したところめちゃくちゃ気に入りました。

小学生くらいのすっごい昔にオーディオ雑誌で見たことがあるような無いような・・とにかくレトロチックでTHE・ヘッドホンと言う見た目ですね。

写真見ればわかるようにかなりボロボロ状態ですがその分破格(約15k)で入手できました。

ハウジングに使われている材質はラジアタパインという比較的安価な素材なので、木材的にはあんまり良い印象はありません。

でも肝心の出音はとても個性的で独特な味がありますね。

高音質!という感じとは違いますが現行機とは違う方向性の変わり種としてすごく面白い音です。

 

 

装着感=普通~良

本体が大きい割には軽い、けれど380gは伊達じゃないのでずっと付けていると首や肩にズッシリときます。

ふかふかと反発力の強いイヤーパッドで遮音性が結構ありますね。

側圧はやや強めですがパッドが深めで柔らかく痛みは出ません。

イヤーパッドは合皮がひび割れていたのでガムテープで表面を剥がしました。

中身はヘタっていないため装着感には問題が無くそのままにしています。

(合皮で蒸れるのが嫌いなので、この方が新品のイヤーパッドよりも装着感は良いんじゃないかと疑ってますw)

僕はヘッドホンは「痛みで付けているのが辛いタイプ」と「外した時に疲れを感じるタイプ」の二種類があると思います。

ULTRASONE系のヘッドホンは前者だと思いますがDX1000は後者だと思いますね。

付けているときはやや暑い以外かなり快適ですが、その重量ゆえ外した時に相応の疲労感があります。

またヘッドホン本体が横に長いせいで椅子に寄っかかっていると頭を傾けた時にハウジングがヘッドレストなどに当たってしまいますね。

そのためリラックスして聴きたいのに少し気を使ってしまうのがマイナスポイント。

ちなみにデフォルトだと耳先が僅かにドライバーと当たるのでトレーニングチューブで厚みをプラス。

そのまま付けていると頭頂部に痛みが出たので、ラムレザーで渡しを付けています。

ラムレザーはハギレだとキロ1000~2000円程度と安くとても重宝しますね。

重さが許容できれば良、重さがキツイときは普通。

側圧もキツくないし痛みも出ない、遮音性も良好と良い部分も多いですが根本的な重量が付けていてネックです。

個人的には装着1時間程度から首に負担を感じはじめます。

ただ痛みは無いので背もたれに寄りかかるようにして首への負担を抑えるようにつければ4,5時間だろうと付けていられました。

しかしADX5000等の軽く、側圧調節も簡単なヘッドホンと比べるとやはり劣りますね。

 

 

 

 

音について

帯域バランスは低>中>高の低音よりフラット。

他のレビューを見ると帯域バランスの感想にバラつきが多いのでかなり環境を反映するタイプじゃないでしょうか。

僕のシステムはADX5000でテクノを楽しく聴ける用にコンセントやケーブル等のアクセサリ類を選んでいるので低音よりでやや寒色のシステム(詳細はADX5000のレビューで)。

簡単に、PC→WaterFall Integrated250→AT-HA5000→HP-DX1000の環境での感想です。

初めて聴いたときは「すごい太い音!」が第一印象。

audiotecnicaやultrasone等の現代的なヘッドホンとはぜんぜん違うTHE・アナログサウンドで少しGRADOのヘッドホンを彷彿とする音ですね。

基本は暖かみのある音調だけど適度な明瞭感もあり、全帯域の音が非常に太く聴きごたえがあります。

鳴り方が独特で特徴的と聞いていた割に僕はS-Logicが効いたヘッドホンに慣れているからかすぐに馴染めました、低音の鳴り方に限ればSignature DJと少し似てますね。

ドライバーの音自体は締まりが良く硬めな出音っぽく聴こえますが、そこにハウジング由来の柔らかな響きが付帯され個性的な濃い音に仕上がっているのかな?

しかし響きの塩梅が良くクドすぎないため、モヤモヤした音と言うよりも分離、見通しも適度に優れクリアな音とさえ感じます。

 

全体の柔らかなイメージとは裏腹に高音はシャッキリと硬めで明るく特に中高音が目立ちます。

その上の超高音が弱いというより遠くから聴こえる印象が強く、非常に奥行き感を感じる音。

耳を刺す鋭さはありませんが変に丸いわけでも無く、太く鮮やかで聴きやすい高音です。

ソースによって低音がかなり前に出てくる場面でもこの高音がしっかりと主張してくれ、ドラムのリード等もしっかりと聴き取れるので打ち込みもなかなか楽しめます。

僕は温度感が高めのヘッドホンは暑苦しくなって聴き苦しく感じてしまう所がありますがDX1000は上下が広く余裕を持って低音、高音と鳴っているようで聴き苦しさは感じません。

ただ前述したように超高音がやや遠めに聴こえるためか音数が増えてくると聴き取りづらく、シンバルやハイハット等は埋もれがち。

低音は鳴り方にホール感、またはフロア感があって非常にそれっぽく鳴ってくれるのも面白いですね。

ラジアタパインのハウジングの箱鳴りがドライバーの音に加わり遠くから聴こえてくるような音で非常に力感があり臨場感、没入感が強いです。

購入前はクラシックやジャズに合うのかな?とイメージしていて僕がよく聴くテクノとかEDM、ガバやハウスには合わないだろうな・・と思っていましたが実際に聴いてみると全然イケる、というか寧ろ得意分野。

元気の良いダイナミックドライバーらしい圧力、練り出し感のある低音なので、テクノやEDMの低音もしっかり空気の震えまで再現してくれます。

ソースによっては遠くから聴こえすぎてやや作られた感もありますが非常に独特で面白い音場感。

広がりを感じる低音ですが分離はかなり良く、質と量の割に見通しも優れています。

ボーカルは適度に湿度を感じ、艶っぽくて生めかしいですね。

近さはやや近め、近いソースでは近く、遠いソースでは遠く鳴らすので極端な遠近はありません。

ただ中低音が豊かなことに起因してか男性ボーカルではやや霞がかって聴こえる所があります。

個人的には余り気になりませんが男性ボーカルメインで聴くような人には微妙かなぁ。

女性ボーカルも特性的にアニソン系の高めの声より少し低めの女性ボーカルの方が艶があってしっとりとエッチですね。

欠点は強いて言うなら音にやや尾を引く響きがあり低音がドッシリとした鳴り方なのでスピード感のあるロックやメタルにはあまり合わないのかなぁ?と思います。

音数が増えてくると処理しきれずにややごちゃつく印象。

ただこの欠点は逆に特徴、個性でもあり僕がよく聴くロッテルダムテクノ系では許容範囲だし低音の深み響きがとても楽しくもあります。

あと高音はもう少し主張が強い方が好みかなぁ程度ですかね。

無試聴購入なので仕方ないですがまあ、格安で手に入ったので文句はありません。

 

 

 

総評としては響きの独特な太い出音のヘッドホン。

独自性の強い音で間違いなく好き嫌いはあるだろうけど好きな人にはたまらない一品。

GRADO+S-Logic+柔らかい響きのようなイメージと言えば伝わりやすいかな。

ボーカルも埋もれずにきちんと前に出てくるので、極端にテンポが早い曲以外ならかなりオールマイティにこなしてくれますね。

昨今のヘッドホンと比べて、「解像度がめちゃくちゃ高い!」とか「分離がめちゃくちゃ良い!」とか性能的な主張は余り感じませんが非常に音楽的で魅力的な音の名機だと思います。

 

こんな曲とか楽しい。

空間の広さと低音の量でスケールの大きい曲、迫力がほしい曲とはよく合うね。