SR-407 Signature

STAX SR-407 Signatureのレビューです。

正確にはヘッドホンではなくイヤースピーカーに該当する製品であり、通常のダイナミック型製品とは異なり静電型(コンデンサー型とも)の製品。

プラグもPhoneプラグではなく専用のプラグ、静電型専用のドライバーユニットが無いと音すら鳴らない非常にニッチなコダワリの強い製品です。

STAXはセットで購入しないと音すら鳴らないというのが個人的にはネックで、ずっと存在を知覚していながら所有してはいませんでした。

ある時ドライバーユニットが中古8k程度で販売されているのを発見、セットで25k程度だったので購入してみましたがいや音を聴いて本当にビックリです。

装着感=良

デフォルトの状態でも中々に良い装着感。

そこそこ軽量な本体(340g)に渡しがついたヘッドバンド、そもそも僕が他のヘッドホンにいつも取り付けているレザーの渡しはAKGやこのSTAXを参考にして取り付けていますからね。

ただデフォルトのパッドが薄めで長時間つけていると左右から耳を押されている感覚がやや気になります。

そこでいつもお世話になっているDEKONIのパッドを買ってみました。

購入したのはDEKONI EPZ-AEON-FNSK

取り付け方がSR-407と同じ両面テープ方式、AEONを試聴した事があるので「大きさ的にイケるか?」ってのが購入理由です。

読みどおりで大きさも問題なくスピーカー部分に被らず換装できました。

少々不格好ですが元々STAXの見た目には否定的、「こんな虫カゴ誰が欲しがるねん!」とケチつけてた口なので無問題ですw

ただ耳が付かなくなっても荷重の殆どがドライバー部分のためか、少し側圧が強くて"最高"の装着感ではありませんね。

ヘッドバンドはプラスチック系の樹脂バンドなので側圧調整が出来ず、その点はADX5000等の装着感=最高としているヘッドホンには劣ります。

音について

音についてはちょっと信じられないくらい良いです。

システムはPC→Waterfall Integrated 250→SRM-1 MK2 P.P.→SR-407 Signatureで聴いていきます。

※詳細が見たい方は画像クリック。

余談ですが、RCAケーブルはクールな音色のDHLabs REVELATIONよりもKIMBER KABLE KS-1021のがウォームな音色で相性が良かったです。

使用率の問題で4:1くらいでAT-HA5000を使っていたため、こちらではREVELATIONを採用しました。

「な、なんだこの見通しの良さ…!?」

一聴してまず圧倒的な分離の良さ、それでいて自然な音の輪郭、強調感の無さに驚きました。

音が非常に滑らかでシルクのような柔らかな質感、スッキリとした心地よい音が自然に広がり上から下まで全帯域見通しが抜群。

音の鳴る瞬間の力みが無く、軽やかで明るい上品な音色。

粒の整った綺麗な音のためかエッジのキツさを感じず、力を抜いて聴ける自然さを持ちながらディテールが緻密で情報量が多い。

ダイナミック型ヘッドホンとは一線を画した静電型の鳴り方を存分に感じられます。

高域は付帯音が無く澄んだ鳴り方、とても伸びの良い鮮やかな音で楽器を楽器らしく鳴らす、ヘッドホン固有の癖を感じさせません。

とても分離が良いのに音に嫌な硬さが無く、圧倒的に歪が少ない純粋無垢な音。

中域も同様、実に整った綺麗な音を鳴らします。

スピーカーとも異なりますが音像が大きく、まるで歌手がそこで歌っているような自然に聴こえ方。

音に奥行きがあり情報量が多く非常に繊細。

分離などの基礎性能も高い水準で持ち合わせるため、ハイテンポな曲も音がダブつく事無く丁寧な描写です。

女性ボーカルが特に心地よく透明感のある音がヒーリング的な音楽とはこれ以上無いマッチング、Enyaとか好きな人はたまらないんじゃないかな。

低域はSR-407唯一の弱点、というか静電型の弱点と言われています。

静電型は薄い振動膜を薄い金属で挟み電圧をかけることで振動膜を前後に動かし音を鳴らしています。

そのため振動膜を大きく動かす必要のある低音は構造上鳴らしづらいとされています。

実際の出音ではアタックがやや弱い程度で帯域は非常にワイドレンジと思いますね。

ドラムの張りや躍動的なノリの良い鳴り方はダイナミック型ヘッドホンが勝るものの、基礎性能では圧倒します。

量は少なめですが非常に分離と締りが良く見通しが良い低音。

家のオーディオシステムは良くなったと自負がありましたが、ポン置きのSRM-1 MK2 P.P.+SR-407を聴くと「え……今まで聴こえなかった音が聴こえる!?」と購入時は結構なショックを受けましたねw

(この件がキッカケでケーブルやコンセントの組み合わせを真剣に再検証し、システムの大幅な組み換えを行いました…)

現在こそADX5000のが分離やレンジ、アタックの良い低音を鳴らしてくれていますが、ほぼ環境投資を必要とせずこのレベルの音が鳴るのは驚異的な高音質と思います。

総評、軽やかな明るい音色のコスパに優れたヘッドホン(イヤースピーカー)。

当時の新品価格46200円(+ドライバーユニット代ですが)でも「安い!」と言い切れるような図抜けた基礎性能に驚きです。

アクセサリなど外的要因が最終的な音質に余り影響しないため、DAC(プレイヤー)+ドライバーユニット+ヘッドホンだけでシステムが完結してしまう手軽さも魅力。

クラブミュージック等で重低音の圧力や、ノリの良さを求める方にはULTRASONE等のヘッドホンを薦めますが、価格比で最高音質を求めた場合SR-407等のSTAX系が台頭してきますね(僕はドライバーとセットで25kで買っていますし)。

静電型らしいきめ細やかな音色を体験してみたい方にも薦められるバランスの良いヘッドホンと思います。

 

 

こんな曲とか合うかな。

万能型ですが静電型らしい音色で記事を書きやすいヘッドホンでした。

キレも悪くありませんがゆったりとした曲や音数の少ない曲で楽器や声の質感を楽しむのが気持ち良いですね。